7/11の横浜

巨人4−1横浜
グライシンガー−那須野

巨人が連勝で貯金を今季最多の4とし、中日に代わり今季初の単独2位に浮上した。2回に谷の6/8以来の5号ソロで先制。4回にはグライシンガーのスクイズ、高橋由、岩館の連続タイムリー2Bでこの回3点追加。打線は今季初の5試合連続2ケタ安打。グライシンガーは7回被安打8、奪三振5、四球1の無失点で8勝目。クルーンが21S。一方横浜先発那須野は4回被安打8の4失点。これで東京ドーム3連敗で、リーグワーストの10敗目。打線は10安打放つも、内川の7号ソロで1点を返すのみ。チームの連勝は2で止まり借金は29。

第五十八話 校内 (連続63日目)

四日目。
絶望から達観に達しているように見えるテレコスピーカー。
ほんともう、休ませた方が良いのではないかと何度も思った。
どう考えても消耗しすぎだろう。本当にテストだけ受けて帰ってきているのだろうか?何か余計なトラブルに巻き込まれてないだろうか?
しかしやる気になっているテレコスピーカーに水を差せない。差すわけにいかない。
試験終わるまでは様子を見るしかないのか…心配だ。


なので、私はこっそり猫達を学校に行かせてみた。
いつもは校門まででそれ以上は侵入しないテレコスピーカー警護班を、隙を見て校内に侵入させようと思うのだ。
作戦をより確実なものにするために何匹かの別働隊も差し向ける。私自身も学校の近くに行けばさらに確実だがそうすると私が校内を嗅ぎ回っていることがばれてしまう。それは避けたい。
私は自宅で作業(猫砂取り替えたりとか部屋掃除したりとかのいつもの雑務)しながら猫達の報告を待つ。いつものように薄くリンクも張っている。しかし別の案件も同時進行なのでこれにばかり集中するわけにも行かない。定期的にやってくる伝令役だけが頼りだ。
…9時頃、最初の伝令が帰ってきた。
校庭への侵入に成功。校内に入ってしまうと目聡い学生達に発見されてしまうかも知れないし、そうなると試験どころではなくなってしまうだろうから今は外から様子を見るだけだ。まだ特に変わったことはない。皆大人しくテストを受けている。普段は本当に受業が行われているのだろうかと疑問が湧くほど騒がしいらしい(警護班の証言)のだが、試験中はとても静か、らしい。
私は伝令役のオクヤミに現場の判断で校内にも侵入して良い、但し危険は絶対に避けろ、と命令を伝えた。
数分後、入れ替わりにオイワイがやって来た。どうやらナゴナが何人かの生徒に発見されてしまったらしい。これも計算の内だが早すぎる。
「にぅー」
そうか、そんなには騒ぎにはなってないのか。テストの邪魔になっていないならそれで良い。
「にー」
そして予定通り何匹かを校内に潜り込ませられたか…ストー、ミミナシ、ルーク。彼らなら大丈夫だろうが無理は絶対にするなと伝えてくれ。
「にぅー」
そうか、ヤマダデだものな。その辺は巧くまとめるか。それと、自分の相方をいつもいつもバカ扱いするのは感心しないな。オクヤミも全く同じ事を言っていたが。
「にぅ!?」
あ、余計なことを言ってしまったか。
フォローの間もなく『オクヤミの癖になまいきなぁあああああ!』的なことを言いながら走っていった。心配事が増えてしまった。二人はお互いを軽蔑し有っているようでなかなか仲がいいのでそれほどでもないのだが作戦中にケンカを始められては不味い。
掃除が終わって別の案件を進めている所に中学生達に追いかけられて消耗しきったナゴナが帰ってきた。
「…にー」
おお、ご苦労。ちゃんと任務を果たして一人で家に帰って来れたのは初めてじゃないか。
私はナゴナの頭をなでてやった。
「にー!」
うんうん。立派になったな。その調子で頼むぞ。さあ、今日はもう良いからゆっくりお休み。
「にゃー!」
ナゴナは誉められたことで一気に元気が回復したようだ。急いで猫部屋へ走っていく。多分グナイに誉められたことを自慢しに行くのだろう。
グナイは現在夜のパトロールに割り振られているので相手をしてもらえるかどうかは彼女の気分次第だ。
10時になるとまた伝令がやって来た。今度の伝令役はナスノ。いくらなんでも少しペースが速すぎる。何かあったのだろうか。
「にゃー」
オクヤミとオイワイがケンカしてるところを用務員に発見されてしまったか。やっぱり。で、他のチームのメンバーも見つかって校外に追い払われてしまったと。
「にゃー」
結局騒ぎが大きくなってしまったな。気が散ってテストどころじゃ無くなっていたとしたら済まないことをした。
「にゃー」
校内に三匹が取り残されているので近くでまとまって待機中らしい。
私はリンクをほんの少し強化して三匹の無事を確かめる。…見えている物や聞こえている音からしてこれは無事に脱出できたようだな。
私はヤマダデチーム以外はその場で解散、校内に侵入できた三匹にはすぐ戻って報告するように命令する。
校内侵入作戦終了。


ストー、ミミナシ、ルークの報告によれば、校内に見てわかるような異常はなかったようだ。怪人改造人間の類がまとめて通っている学校なのでいくつか大げさな装備が有る意外はいたって正常。私が通っていた頃ともそれほど変わっていない。少子化の影響で開き教室が増えているくらいか。そこで悪巧み、という話も無さそうだ。
ルークによると、
『廊下を歩いているとすぐに生徒に見つかってしまう。これは絶対強力な監視システムがあるはず』と力説した。
私は気になってルークの見聞きした事を見てみる…試験中の教室の前の廊下を堂々と歩く猫がいたらそりゃ目立つだろう。少し人選、いや猫選を誤ったか。



さて、学校は何もテレコスピーカーの居る中学だけではない。
この地域全ての学校をチェックする必要がある。
大きめの騒ぎをおこしてしまったので他校のチェックはさらに厳しいものになるだろう。
今日と同じような方法を採れば間違いなく進行中の「何か」は隠れてしまうだろうし、何より私が学校に興味を示しているのがばれてしまう。
昨日の開花の話によれば、私に知られては困ることは全て私が知らないであろうと思われている場所でおこるのであるから、私がそれを知るためにはそれを宣伝するような方法ではいけないのだ。
つまり、私はすでに大失敗してしまったかも知れない。
しかも成果は全くない。
そもそも「何か」がなんなのかが皆目見当が付かない。
設備的な悪巧みなら猫達が見て私が判断すればわかる。しかし学校内部の関係性に関わる問題だとお手上げだ。長時間学校に入り込み、すっかり周りと溶け込んでみて初めてわかることだって有る。
テレコの学校を最初に調べたのは間違いだった。正直に答えてくれるかは賭だがテレコの学校のことはテレコに聞けばいいのだ。
問題はそれ以外、学校側が入学時に厳正な検査をするので一般人しか入ってこられない普通の学校で何がおこっているか、だ。
生憎私の知り合いに普通の学校に通っているような普通の子供は居ない。小学校なんてさらにどうしようもない。
困った。
こっそり怪人が大量生産されている、なんていう単純な話だったら良いのだが。


困った苦し紛れに私は近所の小学校にレベッコだけを行かせてみた。一般的な小学生が通う一般的な小学校だ。
レベッコなら単独行動させても無事に帰ってこられるだろうし、一匹だけならそれほど大きな騒ぎにならないだろう。
小学生なら多少不思議な物を見ても受け入れられるだろうし、小学生レベルの口コミならそれほど大きくは広がらないだろう…いや、大きくは広がるだろうがそこに意味を見いだすにはもう少し年齢が行かないと無理だろう。警戒すべきは先生達くらいか。
問題は小学校に私に知られると困る何かが有るとは思えない事だ。
無駄足になるだろう。そう思っていた。
違った。