ネコ使い

第七十五話  触るとまだ暖かい 

「約束の時間は3時ぴったりだったしな。仕方ない」 帰ろうとする私をテレコスピーカーは引き留めた。 「でも、遠方から来る患者にその仕打ちは酷くないですか?そりゃ時間に遅れたあたし達が悪いのは当然ですけど、だから留守って」 沢戸の事を知らなければ…

第七十四話 北上 (連続80日目)

エクソシスト、もとい、沢戸に頼るのはとても嫌だったが背に腹は代えられない。 私は電車を乗り継いで北の町に向うことにした。 いつものように地域で言えば2つ北の地域だ。ギリギリ一日で行って帰ってこれる距離。流石にその距離を事故らずに走りきる自信…

第七十三話 報復 (連続79日目)

子供の頃は猫が嫌いだった。 むしろ恐れていた。 そりゃそうだ、のこのこ近づいてきて仲良く遊んでいたと思ったら、突然血を吐いて死んでいくのだ。しかも次から次へと。トラウマにならない方がおかしい。 妹の猫アレルギーはおそらくこの時の経験が効いてい…

第七十二話 斬 (連続78日目)

随分格好悪い奴がいるな、と俺は思った。 そこは誰でも参加可能のぶっ殺し隊…よーするに屋台骨が傾きかけている組織が最後の反抗の為に組織外から金で買える戦力をかき集めて作った部隊の一つだった。 おそらく今日の戦いが勝ちでも負けでもこの組織の壊滅は…

第七十一話 ナイター (連続77日目)

なんというスローカーブ…これはきっと特大ホムーラン。 私はぼんやりとナイターを観ながら頭痛に耐えていた。 「やっぱりまだ痛いんだ?」 「ああ…明日は病院行ってみるよ」 しかしおそらく医者では直せないだろう。魔法診療が必要なのだろうが、たまよ達と…

第七十話 平和 (連続76日目)

追試も補習も無かった。テレコスピーカーの夏休みは無事に始まった。 追試も補習もあったが、刻と刺の夏休みも特に問題なく始まろうとしている。 追試も補習も関係ないが、私の夏休みはもう終わっている。 「あー夏休みのー宿題がーーゆーるーゆーるーとーし…

第六十九話 種明かし (連続75日目)

動物喫茶ヨモスエは猫喫茶もふもふ亭の姉妹店…らしい。 もふもふ亭もどうやって経営が成り立っているのか疑問だったが、こちらはさらに不思議なことになっている。 何せ喫茶店なのに獣臭いのだ。 「流石に大型の、牛とか馬とかは納屋の方に行ってもらって別…

第六十八話 隔離 (連続74日目)

なんでも知ってるなんでも出来る。 しかし、彼も私も人間だ。例えこの世にある全ての粒子の動きを計算しつくせたとしてもそれを永遠に続けることは出来ない。 どうしても意識していない部分に隙が出来るし、想定していないことには対応できない。集中力だっ…

第六十七話 先生 (連続73日目)

アケボノ、と紹介された。 イシイよりほんの少し大きいだけの、小柄な猫だった。どう考えてもアンテナ役がせいぜいで、前線に出て戦う猫ではなかった。 私達の話を聞くと彼もまたすぐさま私達の仲間に入りたがった。 そこで断る事も出来たはずだ。リンク自体…

第六十六話 七目公園 (連続72日目)

猫の集会場とは、なんのことはない、七目公園の隅だった。 予定より早くたどり着いた私達は公園内にいた全ての猫達の話を聞き…そして全ての猫がツカワレネコになってしまった。 イシイは私が荒れていた時期の事を知らないのでリンクの危険性がよくわかってい…

第六十五話 七目高校 (連続71日目)

昨晩雨の中を真面目に頑張った猫には褒美を。そうでもなかった猫にはそれなりに。 褒美と言っても何せ猫なので、重点的にノミ取りしてやる以外はネコ缶のグレードを変えてやるくらいのものだが、全く同一に扱うと拗ねるのだ。 全く気にしない猫もいるがだか…

第六十四話 二日酔い (連続69日目)

斬は自分で持って来たツマミには一切手を付けず、酒ばかりを飲んでいた。 そもそも刃剣は何も飲み食いしない方が普通で斬のようなウワバミの方が珍しいのだが、それでも人の姿をした者がそんな飲み方をしていると気になる。 何度も飲んでいるのに毎回のよう…

第六十三話 お手伝い (連続68日目)

約束は約束なので私は夏休み限定でテレコスピーカーを助手にする事を認めた。 「追試や補習が無ければ、だがな」 「えー」 と言いながらもそれほど嫌がっていないのは、それなりに手応えを感じているからか。 全くなんだって私の仕事を手伝おうなんて気にな…

第六十二話 使いと人質 (連続67日目)

この小学校をわざわざ狙って名称不確定の秘密結社がテロを仕掛けて来たのだった。 校門から馬鹿正直に数体の魔獣が入ってきた。 特に意味のない、わけの分からない襲撃のようにも見えた…人使いを潰すつもりならこの戦力は馬鹿げている。 案の定、次から次へ…

第六十一話 レベッコの報告 (連続66日目)

まずは申し訳有りません。 私のために戦力を大幅に割いていただいて…ええ、もう大丈夫です。今からもう一度あの小学校にだって行けますよ? はは、冗談です。二度とごめんとは言いませんが、しばらくはかんべんしてください。他の猫達を行かせるのも控えた方…

第六十話 帰還 (連続65日目)

猫達を再び学校周辺に放ってからすぐ、ほんの一瞬レベッコとリンクが繋がった。 大慌てで私はそれを強化するがあっと言う間にそれは薄れ、消えてしまった。 これはこちらの位相に帰って来れたということなのか。再び切れたのは意識を失ったからか。それとも…

第五十九話 調査 (連続64日目)

今日で試験も終わりだ。 日に日に弱っていくテレコスピーカーが今朝どんな様子だったのかは不明。 私が起きた時にはすでに登校してしまっていた。猫達に聞いたところ、それほどは弱っていなかったらしいのでこちらを心配するのは後回しで良さそうだ。 昨日か…

第五十八話 校内 (連続63日目)

四日目。 絶望から達観に達しているように見えるテレコスピーカー。 ほんともう、休ませた方が良いのではないかと何度も思った。 どう考えても消耗しすぎだろう。本当にテストだけ受けて帰ってきているのだろうか?何か余計なトラブルに巻き込まれてないだろ…

第五十七話 暇つぶし (連続62日目)

試験三日目。 もう諦めた方が良いんじゃないか…と止めたくなるほど消耗しているテレコスピーカーを見て、昨日よりも強く『ダメなんだろうな』と思った。 しかし中学の期末試験にそんなに疲れるような要素、有っただろうか? 夜はちゃんと寝ているような様子…

第五十六話 暇 (連続61日目)

試験二日目。 すでに絶望の色が見えるテレコスピーカーの顔を見て、『もう、気を使う意味なんて何一つ無いのではないだろうか』と思いつつも私は彼女たちが帰ってくる正午過ぎには十和田の研究室に居た。 「改造人間にまっとうな人生はありえんけど…まあ、今…

第五十五話 試験中 (連続60日目)

試験が始まった。 中学生達の勉強の邪魔をしてはいけないだろう。 そんなわけで私は第2事務所に移動していた…ようは、十和田の教室にお邪魔していた。 「済まないな、十和田ランシール」 「あーかーまーわーんーよーねーこーつーかーいー。どーせーひーまー…

第五十四話 夢オチ (連続59日目)

私の目を覚ましたのは特別対策部の例の二人組でもインチキ魔法継続中のフサエの場でもなく、斬だった。 「よう、ネコ殺し。良い夢見たか?」 血にまみれた蒼々の峰で私を軽く叩く。 「しかし相変わらず力の使い所を読めない奴だな…意識が戻ったなら、この惨…

第五十三話 催眠暗示気の迷い (連続58日目)

駅へ向かう途中で気付いた。 自転車を停めるところが無いじゃないか。 駅前に臨時駐輪場が設置されているがそこから駅前の一番込んでいる辺りまでは相当の距離がある。バスで行くべきだったか?あるいは徒歩で?そもそも衆人環視の元、人の子を攫って何もな…

第五十二話 探索or補習 (連続57日目)

私はそれから各パトロールチームとのリンクを順番に強化し、それぞれの現在の状況をチェックした。 ほんの数時間前からモザキャを装着していた子供達が攫われたり行方不明になったりする事件が発生しているようだ。 テレコだけを狙った犯行というわけでは無…

第五十一話 試験前 (連続56日目)

不具合が発見されたとかで、スーパーモザイクキャンセラーは販売停止、メーカーが回収を呼びかけている。 どうやらやはり例の名称のない秘密結社の戦略の一環だったようだ。テレコスピーカーの育ての親がやたらと熱心だったのはそのせいか。つーかあの人は今…

第五十話 メガネ (連続55日目)

スーパーモザイクキャンセラー。 アイス戦隊クールメンジャーに登場する、ニクキュウの断末魔シーンにかかるモザイクを取る為のオモチャだ。 メガネのように装着し、該当するシーンを見ると36種類のコミカルなニクキュウの絵が見られる。 まあ要はただの、…

第四十九話 番組 (連続54日目)

テレビを付けると例の戦隊が例の戦闘機械と最終決戦を行っていた。猫達を通じて知っていたし見てもいたが、テレビで見るのは初めてのことだ。 「でも、なんでいつも日曜朝なんですかね?」 録画編集してあるからだ。そうでないととてもテレビでは流せない内…

第四十八話 リハビリ (連続53日目)

ニクキュウの乗っていた戦闘機械は量産型だったようだ。 隣の地域で大量発生し、今例の戦隊チームが必死になって駆除している。 私はお礼代わりに戦闘データーと所見を戦隊本部と現場に送った。 「サンキュー♪」とリーダーは言ってくれたが、果たしてどれだ…

第四十七話 鳥足 (連続52日目)

秘密結社は何故秘密なのか。 もちろん秘密とは甘美なものだ。 文字通り秘められた密。誰もが夢中になるほど甘く、危険。 結社に在籍するメンバーの何人かは確実にそれを目的に行動している。つまり、「誰も知らない私でありたい」 しかし秘密結社を秘密にし…

第四十六話 夏休み終了のお知らせ (連続51日目)

それから何度か気絶したりしながら一週間が経とうとしていた。 正直に言えば犬使いへの興味半分、もう半分はフサエに再び会いたいという一心だったが…最後の方は「チッ」と舌打ちされた上にモノも言わずに現実の時間に送り返されたので流石に自重した。フサ…